ビジネス系インフルエンサーへの苦手意識に関する話

SNSの登場によって個人が誰でも情報発信/閲覧できるようになり、一般人でも影響力を持てる時代になった。彼らはインフルエンサーと呼ばれ、多くのフォロワーを抱えている。

インフルエンサーはそれぞれの活動領域によってカテゴライズできる。美容系、グルメ系、ガジェット系など、それぞれのジャンルに特化して情報発信を行う。その中で主にお金に関する発信をしている人たちはビジネス系インフルエンサーと呼ばれる。

苦手意識の理由1:誠実さの欠落

ビジネス系インフルエンサーは、自分の過去の実績を基にビジネスに関する情報発信をしているケースが多い。「月収1000万円です」「年収1億円です」などと言い、これらを達成するためにはどうすれば良いのかを解説している。しかし実際にそれを実践して稼げるようになる人はほぼ0人であり、ほとんどの人は0円で終わる。

ビジネス系インフルエンサーのことを不誠実だと思うのは、あたかも実践すれば高確率で稼げるかのように見せているからだ。そして「学歴や才能は関係ない」「やる気があれば稼げる」という聞こえの良い文句を言い、オンラインサロンに勧誘する。そして稀に成功者が出ると自分の手柄かのように紹介をし、フォロワーからの信頼を更に得ようとする。しかし彼らの稼ぎ方を実践して高確率で稼げるのであれば、貧困などという言葉はこの世に存在しないだろう。「東大に合格させます」と豪語する予備校の東大合格率が1%しかないようなものであり、かなり不誠実な発信だと感じる。

また、ビジネス系インフルエンサーの紹介する手法が既に古いケースも多い。例えば副業として定番のブログにおいて、「毎日更新すれば稼げる」と発信している人がいるが、今現在で毎日更新して稼げる可能性は0%だと思って良い。素人が1日(実労働は1~2時間?)で書いた記事が上位表示されるほど今のSEOは甘くない。ビジネス系インフルエンサーは様々なジャンルに手を出していて、特定のジャンルにおいては知識をアップデートできていないことも多い。しかし発信しさえすればインフルエンサー本人が稼げるため、古い情報だろうが発信するというわけだ。

こうしたビジネス系インフルエンサーのたちが悪いのは、発信内容がおそらく嘘ではないということだ。自分の経験を話しているだけであり、必ず稼げると言っているわけでもない。それを受け取り手が勝手に期待しているだけだ。とはいえ、誤認させるような発信をしているのは事実であり、それでお金を稼ごうとするのは不誠実だろう。提供した価値に対してお金が発生するというのがビジネスの正しい形であって、発信された情報で稼げる可能性が0に近いのだから、そんな発信でお金を稼ごうとするべきではない。いわば情弱を餌にしたアコギな商売だと言わざるを得ない。

苦手意識の理由2:詐欺師の多さ

ビジネス系インフルエンサーの定番の稼ぎ方の1つは、コンサルだ。例えば半年で30万円という料金で、ブログで稼ぐ方法を教えるというようなものがある。しかしこのようなコンサルは詐欺まがいのものである可能性が高い。よくあるのは、コンサルの申込前は即レスしてくれるが、申込後はいつまで経っても連絡が返ってこないケースだ。質問に対して「それくらい自分で調べてください」と返答されるケースもある。

特に個人でコンサルをしている人はこの傾向が強い。というのも真面目にコンサルをする場合、1人では間違いなく仕事が回らない。インフルエンサーはコンサル以外にも仕事があることに加え、コンサル生は1人ではないからだ。そもそも半年で30万円ということは、1日あたり1700円弱だ。インフルエンサーにとって1700円の価値は10分程度にしか相当しない。つまり30万円で得られるものは、1日10分程度の相談枠だけだと考えて良い。コンサル生側からすれば30万円も払っているから何でもしてくれると感じるだろうが、インフルエンサーからすればたった30万円しか貰っていないのだ。

このような認識のズレがあることは、インフルエンサー側からすればはじめからわかりきっていることであり、それでいてほとんど働きもしないコンサルを続けるというのは詐欺と同じだ。有名なインフルエンサーでもこの有り様と聞くのだから、世も末である。

関連して、SNSのプロフィールにシンデレラストーリーを記載している人は詐欺師だろうと考えている。シンデレラストーリーとは、人生のどん底から成り上がったという内容の経歴であり、共感を得るために用いられる。シンデレラストーリーを都合良く持っているとは考えにくく、嘘の経歴の可能性が高いと考えるのが自然だろう。自分の経歴を偽るような人は信頼に値しないため、詐欺師認定している。

フォロワー側にも問題がある

ビジネス系インフルエンサーの人間性に問題があるというのは既に語ったとおりだが、フォロワー側にも問題がないわけではない。彼らは「楽に稼ぎたい」「楽に稼げれば良いな」と思っているのだ。例えばYouTubeの再生回数を見ても、初歩的で簡単な内容の動画や「やる気があれば稼げる!」のように能天気な動画ばかりが伸びている。逆に専門的で真面目な動画は伸びていない。コンサルを受けている人でも「時間がないのでできません」「難しいのでできません」という人が少なくない。

誰でもできる簡単なことでお金を稼げるのであれば誰も苦労しないし、そんなことはほとんどの人がわかっているはずなのだが、ネットビジネスや副業の話になった途端、簡単に稼ぎたいと思う人が急増する。そして簡単な内容の発信の方が伸びるため、インフルエンサーもそういった発信しかしないという悪循環に陥っているのだ。

成功例より失敗例のほうが役に立つ

全てに当てはまることだが、成功例より失敗例のほうが圧倒的に役に立つ。一般的に成功と言われるものは、個人の才能や知識量、人脈や環境、そして時の運に左右され、自分でコントロールできない要素が多いため、再現性がかなり低い。一方で失敗は自分でコントロールできる要素が原因になっていることが多く、再現性はかなり高い。例えば、ヒカキンの成功体験を聞いて実践しても、ヒカキンのようになれる可能性はほぼ0%だ。しかし「タイトルやサムネイルの研究をしなかった」「アナリティクスを見て分析をしなかった」などの失敗談を多く聞けば、失敗の要因を回避することで成功しやすくなる。

ビジネス系インフルエンサーのきらびやかな成功例に憧れる気持ちもわからないでもないが、成功例から学べることは非常に少ないということを理解しておきたい。