2022年に公開されたChatGPTに始まり様々な生成AIが登場、今や一部の領域では生成AIの使用が前提となりつつある。一方で生成AIに対して、より正確に言えば生成AIを使用して小銭を稼ごうとする輩に対して嫌悪感をあらわにし、アンチAIを叫ぶ人もいる。AIブームを利用してAI副業に関する情報発信をする人も増えている。広義のビジネス系領域(金銭が発生する活動くらいの意味)において、AIの話題は避けて通れなくなっているのは皆が感じていることだろう。
この状況の中、AIの生成物を販売すればスキルがない素人でも稼げるようになると勘違いしている人は多い。実際にYouTubeではそのような発信が多く、そう思ってしまっている人が量産されていることだろう。しかし実際はAIの生成物には1円の価値もなく、その領域のプロが手を加えて初めて価値が発生するということを知っておかなければならない。
AIの生成物に価値はない
「AIが作った絵を売れば素人でも稼げる」「AIが作った文章をブログに投稿すれば素人でも稼げる」「AIにプログラムを書かせれば素人でも稼げる」などと勘違いをしている人は少なくない。ネット上にはそう勘違いさせるようなコンテンツが溢れているからだ。しかし実際はAIの生成物に価値はなく、価値がないもので稼ぐことはできない。
これは、AIが誰でも簡単に使用可能であり、誰でも生成可能だからだ。無料もしくは安い料金で簡単に手に入る物をわざわざお金を払って買う人はいない。価値とは希少性であり、皆が手に入れられるものに価値はないのだ。もっと言うと、AIに指示出しをしているだけの人にも価値はない。AIで稼ごうとする人は、AIは自分しか使っていない秘密のツールであり、そんなツールを使っている自分は価値が高いという錯覚に陥りがちだが、現実はそうではない。そもそもそのような人は情弱である可能性が高いので、錯覚に陥るのも仕方のないことではあるのだが。
もちろん、現時点ではAIは社会に完全に浸透しているとは言えず、全員が使用しているわけではない。そのため社会とのリテラシーのギャップで稼げている人もいるだろうが、それも長くは続かない。
AIの役割:手順のショートカット
AIは素人でも稼げるようになる魔法のツールではなく、プロが手順をショートカットするために用いるツールでしかない。1から10まで全てをAIに任せ、自分は寝ているだけで自動で稼げるのであれば、早くそんな時代が来てほしいものだ。
例えばブログ記事作成であれば、見出しの構成案や内容をAIに考えてもらうことで時間短縮が可能だ。しかし生成された文章の手直しや肝心のSEO対策は自分で行わなければならず、SEOに関するスキルが必要となる。仮にAIによってSEO的に満点の記事を生成できたとしても、それだけでは検索上位を獲ることはできない。記事作成はブログ運営における作業の1つでしかなく、他にやるべきことは大量にあるのだ。もっとも、全てAIで生成された記事はGoogleによってほぼ100%弾かれるのだが。
エンジニアであればフレームワークのようにAIを使用して時間短縮を可能にしたり、行き詰まった際にAIに「解決策」を出してもらうことで、より優れた解決策を思いついたりするという使い方ができる。一方でプロジェクトの全てをAIに任せるというような使い方はされていない。AIは単純作業しか行えない無能エンジニアの代わりにはなるが、頼りになるチームメイトにはならない。
AIは100点を生成するツールではなく、100点を目指す際の単なる時間短縮やアイデア出しのアシスタントツールであり、実際に100点を出すのは知識と経験を持つ人間なのだ。
未来:AIの進化
いくらAIが洗練されて間違いやバグを引き起こさなくなり多くの作業工程を担えるようになっても、皆一律にAIを使用できる以上、AIの生成物に価値がないことに変わりはない。
もっと言うと、生成物で差がつかなくなるということは、その他の部分で他者との差別化をしなければならない。それはコンサルなのか納品スピードなのか、それとも今までの付き合いの深さやコミュニケーション力なのか、いずれにせよ素人が稼げるようになるわけではない。むしろ素人や経験の浅い人でもできていたような領域はAIによって淘汰されていき、市場の求めるレベルが高くなる。
結局のところ、他者とは違う部分に価値が生まれるのであって、誰が使っても似た結果が出力されるAIの生成物に価値はないという結論に変わりはない。そして他者とは違う部分は人の手によって生み出されるものであり、その領域に関する知識や経験がなければ生み出すことはできない。
未来:AIの使用は必須
誤解する人はいないと思うが、言いたいのはAIの生成物に価値がないということであり、AIの使用に価値がないということではない。むしろ将来的にAIの使用は必須要件になる可能性が高い。もちろんこれは既にスキルがあるプロの話であり、ノースキルの素人はまずはスキルを身につける必要がある。
というのも、AIは人間よりいくつかの面で優れた優秀なアシスタントである以上、今後はAIの補助が当たり前の社会になると予想されるからだ。つまりAIの使用を前提として仕事を行うようになり、AIを使用している人と使用していない人との格差が明確になる。特にフリーランスは速さが重要視されるケースが多いため、AIを使用せず仕事が遅い人は契約を切られることになるだろう。
早いうちに実際の作業の中でAIを活用しておくことで社会の変化に難なく対応でき、市場における自身の価値上昇に繋がる。